災害が起きたとき、あなたは家族がどこにいるのか、すぐに確認できますか?
私は消防士として勤務する中で、東日本大震災を経験しました。
あの日、私は消防士として災害対応にあたっていました。しかし、家族がどうなっているのか、すぐには分かりませんでした。
電話はつながらず、普段使っていたLINEもつながりません。
家族の安否を確認したい。
そう思っても、目の前では次々と災害対応が発生しています。家族のことが心配でも、消防士として目の前の災害に集中するしかありませんでした。
そんな中、私は自宅付近の救助現場に出動しました。
そこで、妻と子どもが自宅まで衣服を取りに戻っている姿を見かけました。
その姿を見た瞬間、
「家族は無事だった」
と分かり、本当にホッとしました。
しかし、あとになって妻と話をすると、津波被害が出ている地域に家族が戻ってくることは、とても危険な行動だったと感じました。
災害時には、家族を心配する気持ちから、かえって危険な場所へ戻ってしまうことがあります。
だからこそ、私は東日本大震災を経験して、
「災害が起きてから家族で避難方法を考えるのでは遅い」
と強く感じるようになりました。
この記事では、消防士として東日本大震災を経験した私が、災害時に家族で決めておきたい5つのことを紹介します。
災害時に家族で決めておきたい5つのこと
家族を守るために、平常時から次の5つを話し合っておきましょう。
- 避難場所
- 避難ルート
- 連絡方法
- 集合場所
- 家族それぞれの役割
難しいことを決める必要はありません。
大切なのは、「災害が起きたら我が家はどうするのか」を家族全員で共有しておくことです。
家族で避難場所を決めておく
災害が起きたとき、家族がそれぞれ迷わず避難できるように、まずは避難場所を決めておきましょう。
「避難所ならどこでもいい」と考えるのではなく、災害の種類に応じて、どこへ逃げるのかを確認することが大切です。
例えば、津波と大雨では、避難先が異なる場合があります。
内閣府によると、指定緊急避難場所は、災害が発生したときに命を守るため緊急的に避難する場所です。
一方、指定避難所は、自宅に戻れなくなった人などが一定期間滞在するための施設です。
この2つは役割が異なります。
普段から避難場所を確認しておく
普段の生活では、避難場所を意識することはあまりありません。
しかし、街を歩いていると、
「津波避難場所」
「ここから避難」
「海抜○m」
などの看板を見かけることがあります。
東日本大震災を経験して、津波からの避難については大きく見直されました。
ただ、看板があるから安心なのではありません。
自分の家族が「どこへ逃げるのか」を知っていることが重要です。
避難ルートを家族で確認しておく
避難場所が決まったら、次はそこまでの道を確認しましょう。
災害時には、普段通っている道路が使えなくなることがあります。
地震なら建物やブロック塀の倒壊、火災、道路の損傷などが考えられます。
大雨なら道路の冠水や土砂災害などによって、いつもの道が通れなくなることもあります。
消防士として地域の避難訓練で感じたこと
私は消防署で勤務していたとき、地域の自主防災組織の訓練指導に出ることがありました。
その中で実施していたのが、DIGと呼ばれる図上訓練です。
地図を広げて、
「ここは危険ではないか」
「ここから避難したらどうなるか」
「この地域の避難場所はどこか」
などを住民の皆さんと考えます。
そこで感じたのが、長年その地域に住んでいる方でも、避難経路を十分に把握していないことがあるということでした。
特に高齢者の方から、
「避難場所は知っているけれど、そこまでどう行くのか分からない」
という話を聞くこともありました。
だからこそ、私は普段から避難ルートを確認することが重要だと考えています。
東日本大震災で「車で避難すればいい」とは限らないと感じた
東日本大震災のとき、妻から、
「普段なら30分程度で行ける場所まで、渋滞によって6時間かかった」
と聞きました。
この話を聞いて、私は、
「災害時は車で避難することだけが正解ではない」
と痛感しました。
もちろん、車が必要な人もいます。
小さな子どもがいる家庭や、高齢者、身体的な理由から徒歩での避難が難しい人もいるからです。
大切なのは、自分の家族にとって安全な避難方法を事前に考えておくことです。
できれば、避難ルートは1つだけではなく、複数確認しておきましょう。
災害時の連絡方法を決めておく
災害時には、家族と連絡が取れなくなることを想定しておきましょう。
東日本大震災で家族と連絡が取れなかった
これは私自身が強く記憶に残っている経験です。
東日本大震災の直後、家族と連絡を取ろうとしました。
しかし、電話はつながりません。
LINEもつながりませんでした。
家族が無事なのか分からない。
どこにいるのかも分からない。
それでも消防士として、目の前の災害に対応しなければなりません。
家族の安否が分からないまま災害対応を続けることは、本当に辛い経験でした。
大きな災害では、通信設備の被災や通信の集中などによって、普段の連絡手段が使えなくなることがあります。
そのため、家族で複数の連絡方法を決めておくことをおすすめします。
「171」などの災害用伝言サービスを確認する
災害用伝言ダイヤル「171」は、大規模災害が発生した際に、安否情報を音声で録音・再生できるサービスです。
また、インターネットを利用する「web171」もあります。
これらは、実際の災害が発生していないときにも体験利用できます。
いざというときに慌てないためにも、家族で一度使い方を確認しておくと安心です。
家族が離れているときの集合場所を決めておく
災害は、家族全員が自宅にいるときに発生するとは限りません。
父親は職場、母親は買い物、子どもは学校という状況も考えられます。
だからこそ、
「家族が離れているときに災害が起きたら、どうするのか」
を決めておきましょう。
家族を探しに危険な場所へ戻らない
私自身、東日本大震災のときに、このことを身をもって経験しました。
自宅付近の救助現場に出動した際、妻と子どもが自宅まで衣服を取りに戻っている姿を見かけました。
家族が無事だったことに、私は本当にホッとしました。
しかし、あとになって妻と話をすると、
「津波被害が出ている地域に戻ってくるのは危険だった」
という話になりました。
家族としては、必要なものを取りに戻っただけだったのだと思います。
しかし、災害時には「家族が心配だから」という気持ちから、危険な場所へ戻ってしまうことがあります。
だからこそ、
「災害が起きたら、家族を探すために危険な場所へ戻らない」
というルールを、あらかじめ決めておくことが大切です。
家族それぞれの役割を決めておく
最後に、**「誰が何をするのか」**を決めておきましょう。
災害時に家族全員が同じ場所にいるとは限りません。
また、小さな子どもや高齢者など、避難をサポートする必要がある家族がいる場合は、誰が対応するのかを決めておくと安心です。
東日本大震災で私が担当したこと
東日本大震災のとき、幼稚園に通っていた子どもを迎えに行ったのは私でした。
子どもの安全を確認したあと、妻に子どもを預け、私は消防署へ向かいました。
そこから災害対応に従事しました。
そして、その後3日間、家族と連絡を取ることができませんでした。
消防士として災害対応を続けなければならない。
でも、家族がどうしているのか分からない。
今振り返っても、本当に辛い経験でした。
この経験から私は、家族の中で、
「子どもの迎えは誰がするのか」
「高齢者の避難は誰がサポートするのか」
「非常用持ち出し袋は誰が持つのか」
などを事前に決めておくことが大切だと感じています。
家族で確認しておきたい防災チェックリスト
ここまで紹介した5つを、家族で確認してみましょう。
避難場所
□ 地震のときの避難先を知っている
□ 津波のときの避難先を知っている
□ 大雨・洪水のときの避難先を知っている
避難ルート
□ 避難場所までの道を知っている
□ 避難ルートを複数確認している
□ 道路が使えない場合の別ルートを考えている
連絡方法
□ 電話がつながらない場合の連絡方法を決めている
□ 家族全員が「171」を知っている
□ 「web171」について知っている
□ 一度は体験利用している
集合場所
□ 家族が離れている場合の集合場所を決めている
□ 集合場所が危険な場合の対応を考えている
□ 家族を探すために危険な場所へ戻らないルールを決めている
役割分担
□ 子どもを誰が迎えに行くのか決めている
□ 高齢者などを誰がサポートするのか決めている
□ 非常用持ち出し袋を誰が持つのか決めている
ハザードマップを家族で確認してみよう
避難場所や避難ルートを考えるときは、自宅周辺の災害リスクを知ることも大切です。
国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」では、洪水・土砂災害・津波・高潮などの災害リスクを確認できます。
家族で地図を見ながら、
「ここは危ないね」
「津波ならこっちに逃げよう」
「この道が使えなかったらどうする?」
と話し合ってみてください。
地図を見るだけでなく、実際に避難ルートを歩いてみるのもおすすめです。
今日、家族で5分だけ防災について話してみよう
防災というと、防災グッズをそろえることをイメージする人も多いと思います。
もちろん、それも大切です。
しかし、東日本大震災を経験した私は、「災害が起きたときにどう行動するかを家族で決めておくこと」も同じくらい重要だと感じています。
まずは今日、家族で次の5つを話してみてください。
「どこへ逃げる?」
「どうやって逃げる?」
「連絡が取れなかったらどうする?」
「家族が別々の場所にいたらどうする?」
「誰が誰を助ける?」
5分でも構いません。
家族で話し合うことが、防災の第一歩になります。
まとめ|家族を守る防災は、災害が起きる前から始まっている
東日本大震災を経験して、私は家族と連絡が取れないことが、これほど大きな不安になるのかと実感しました。
消防士として目の前の災害に対応しながら、家族の安否が分からない。
そして、災害対応の途中で家族の姿を見つけて安心した一方、その行動が危険だったことを後から妻と話しました。
さらに、幼稚園に通っていた子どもを迎えに行ったあと、妻に子どもを預けて消防署へ戻り、その後3日間、家族と連絡が取れないまま災害対応を続けました。
この経験は、今でも忘れることができません。
だからこそ、家族を守るために、災害が起きる前に次の5つを話し合っておいてほしいと思っています。
- 避難場所
- 避難ルート
- 連絡方法
- 集合場所
- 家族それぞれの役割
災害が起きた瞬間、誰もが冷静に判断できるとは限りません。
だからこそ、何も起きていない今、家族で話し合っておく。
家族を守る防災は、災害が起きた瞬間ではなく、何も起きていない今から始まっています。

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