【元消防士が解説】高齢者は警戒レベル3で避難!「まだ大丈夫」が危険な理由と家族の備え

防災・消防

「まだ雨はそれほど強くない」

「川の水位も大丈夫そうだから、もう少し様子を見よう」

大雨や台風が近づいたとき、そう考えてしまうことはないでしょうか。

しかし、災害現場では、「まだ大丈夫」という判断が、短時間で危険な状況に変わることがあります。

私は20年以上、消防士として災害現場や救助活動に携わってきました。

その中で、今でも強く印象に残っている水害現場があります。

線状降水帯によって大雨が続き、河川の氾濫が心配される中、私は5人の隊員と河川付近の高齢者を救助する活動をしていました。

その時点では、私たちは「まだ河川の氾濫は大丈夫だ」と判断して活動していました。

ところが、活動中に無線から入ってきたのが、

「上流のダムから放流がある」

という情報でした。

私たちはすぐに要救助者とともに、できる限り高台へ避難しました。

その数十分後、河川は氾濫。

先ほどまで私たちが活動していた場所は水に覆われ、流木などの瓦礫が散乱していました。

もし、あのまま活動を続けていたら――。

私たち自身が命を失っていた可能性があります。

この経験から私は、災害では「今は大丈夫」という判断だけで行動することの危険性を強く感じています。

特に高齢者や避難に時間がかかる方は、危険が迫ってから避難するのではなく、安全に移動できる段階で避難を始めることが重要です。

この記事では、警戒レベル3・4・5の違いとともに、なぜ高齢者等が早めに避難する必要があるのか、消防士としての経験を交えながら分かりやすく解説します。

結論|危険な場所にいる高齢者等は「警戒レベル3」で避難を始める

まず覚えておきたいのが、警戒レベルです。

警戒レベル3

高齢者等避難

危険な場所にいる高齢者や避難に時間がかかる人などは、避難を始める段階です。

警戒レベル4

避難指示

危険な場所にいる人は、全員避難する段階です。

警戒レベル5

緊急安全確保

災害が発生または切迫し、命の危険が迫っている状況です。

重要なのは、

「レベル5になってから逃げればいい」と考えないこと。

レベル5は、すでに安全な避難が難しくなっている可能性があります。

また、レベル5は必ず発令されるものではありません。

だからこそ、避難は早めに判断する必要があります。

理由|なぜ「まだ大丈夫」という判断が危険なのか

災害の怖さは、状況が変化するスピードにあります。

雨が降っている。

川の水位が上がっている。

道路に水がたまっている。

この程度なら、

「まだ大丈夫」

と思ってしまうかもしれません。

しかし、

  • 雨がさらに強くなる
  • 上流で大量の雨が降る
  • ダムの放流が行われる
  • 河川の水位が急激に上昇する
  • 道路が冠水する
  • 土砂災害が発生する

など、周囲の状況は短時間で変わる可能性があります。

私自身、その変化を消防活動の中で経験しました。

実体験|「まだ大丈夫」と判断していた河川が数十分後に氾濫した

ここは、この記事で最も伝えたい私自身の経験です。

線状降水帯によって大規模な水害が発生したときのことです。

私は5人の隊員とともに、河川付近にいる高齢者を救助するため活動していました。

その時点では河川の氾濫にはまだ余裕があると判断し、救助活動を続けていました。

ところが、活動中に無線が入りました。

「上流のダムから放流がある」

という情報です。

状況が変わったと判断し、私たちは要救助者とともに、できる限り高台へ避難しました。

そして、その数十分後。

河川が氾濫しました。

先ほどまで私たちが活動していた場所は水浸しになり、流木などの瓦礫が散乱していました。

もし、私たちがその場に残って活動を続けていたら、どうなっていたか分かりません。

隊員自身の命が危険にさらされていたと思います。

この経験から強く感じたのは、

災害では「今は大丈夫」という状況が、そのまま続くとは限らない

ということです。

特に河川の近くでは、自分がいる場所だけの雨や水位を見て判断することはできません。

上流で降った雨やダムの放流など、自分のいる場所から見えない場所の変化によって、状況が一気に変わることがあります。

だからこそ、安全に避難できるうちに避難することが重要なのです。

高齢者等が早めに避難する3つの理由

避難そのものに時間がかかる

高齢者の方の中には、

  • 歩く速度が遅い
  • 杖を使っている
  • 階段の移動が難しい
  • 車椅子を使用している
  • 介助が必要

など、避難に時間がかかる場合があります。

若い人なら数分で移動できる距離でも、家族の付き添いや介助が必要になれば、避難完了までの時間は長くなります。

だからこそ、危険が迫ってから避難するのではなく、早い段階から避難を始めることが重要です。

道路が安全とは限らない

大雨になると、

  • 道路の冠水
  • 河川の増水
  • 側溝への転落
  • 土砂災害
  • 倒木

など、普段とは違う危険が発生します。

特に高齢者にとって、冠水した道路や足元の悪い場所を歩くことは大きな負担になります。

「避難場所まで近いから大丈夫」

とは限りません。

避難経路そのものが危険になる前に移動することが大切です。

周囲の助けが必要になることがある

高齢者の避難では、本人だけではなく、家族や地域の人による支援が必要になる場合があります。

例えば、

「母を迎えに行く」

「車椅子を準備する」

「荷物をまとめる」

といった時間も必要です。

だからこそ、警戒レベル3が発令されてから慌てて準備するのではなく、平常時から避難方法を決めておくことが重要です。

実体験②|避難場所を知っていても「避難経路」が分からない

私は消防署で、地域の自主防災組織の訓練指導を担当した経験があります。

その中で感じたことがあります。

それは、

避難場所を知っていても、実際の避難経路まで把握している人は意外と少ない

ということです。

地域の方とDIG訓練(図上訓練)などを行うと、

「この場所は大雨が降ると冠水する」

「ここは水が集まりやすい」

といった危険箇所を詳しく知っている高齢者の方もいました。

ところが、

「では、災害が起きたらどの道を通って避難しますか?」

と聞くと、具体的な経路まで考えていないケースがあります。

避難場所を知っていることと、安全にそこまで移動できることは別の問題です。

また、高齢者が抱えている不安も一人ひとり違います。

「足が悪いから避難に時間がかかる」

「一人暮らしだから避難のタイミングが分からない」

「車がないと避難できない」

など、それぞれ事情があります。

だからこそ私は、地域防災では日頃からのコミュニケーションが非常に大切だと感じています。

顔を合わせて話しておけば、

「この人は避難に時間がかかる」

「この家には高齢者がいる」

といったことを地域で共有できます。

災害が起きてから突然助け合うのではなく、平常時から地域でつながっておくことも、防災の一つなのです。

警戒レベル3が出る前に確認しておきたいこと

ここからは、読者が実際に行動できるように整理します。

自宅は災害の危険区域にあるか?

まずハザードマップを確認します。

チェックしたいのは、

  • 洪水
  • 土砂災害
  • 高潮
  • 津波

などです。

自宅がどのような災害リスクを抱えているのかを確認しておきましょう。

自宅周辺の災害リスクを確認してみよう

災害時にどこへ避難するかを考える前に、自宅周辺にどのような災害リスクがあるのかを確認しておきましょう。

国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」では、洪水・土砂災害・高潮などの災害リスクを地図上で確認できます。

国土地理院「ハザードマップポータルサイト」

避難場所を確認する

次に、

「どこへ避難するのか」

を決めます。

ここで重要なのは、避難所の名前を覚えるだけではありません。

そこまで安全に移動できるのか

を確認してください。

実際に避難経路を歩いてみる

可能であれば、家族で一度歩いてみましょう。

確認するのは、

  • 所要時間
  • 坂道
  • 階段
  • 狭い道路
  • 冠水しやすい場所
  • 夜間の明るさ

などです。

特に高齢者がいる家庭では、高齢者本人の歩く速度で確認することが重要です。

誰が高齢者を避難させるのか決める

「災害が起きたら誰が迎えに行く?」

これを決めておきます。

例えば、

「警戒レベル3が出たら、長男が母親を迎えに行く」

というように、具体的に決めておくと迷いにくくなります。

避難する基準を家族で共有する

おすすめしたいのが、

「警戒レベル3が出たら、高齢者等は避難を開始する」

という家族の共通ルールを作ることです。

「もう少し待とう」

という、その場の感覚だけで判断することを減らせます。

もちろん、警戒レベルの発令を待つ必要があるわけではありません。

自宅周辺が危険になっている場合は、早めに安全確保を考える必要があります。

警戒レベル3・4・5を家族で覚えておこう

警戒レベル情報基本的な行動
レベル3高齢者等避難危険な場所にいる高齢者等は避難
レベル4避難指示危険な場所にいる人は全員避難
レベル5緊急安全確保命の危険。直ちに安全確保

※警戒レベル5は必ず発令されるものではありません。

「レベル5まで待つ」のではなく、レベル3・4の段階で避難することが重要です。

警戒レベルについて詳しく確認する

警戒レベル3「高齢者等避難」や警戒レベル4「避難指示」、警戒レベル5「緊急安全確保」の具体的な意味については、内閣府の公式サイトで確認できます。

内閣府「避難情報に関するガイドライン」

よくある質問

Q. 高齢者は必ずレベル3で避難するの?

「高齢者だから全員が必ず避難する」という意味ではありません。

警戒レベル3は、危険な場所にいる高齢者等が避難を始める段階です。

自宅が安全な場所にある場合など、必要な行動はそれぞれの状況によって異なります。

まずはハザードマップで自宅の災害リスクを確認しておきましょう。

Q. レベル4になってから避難すればいい?

高齢者等の場合は、レベル4まで待つのではなく、レベル3の段階から避難を始めることが重要です。

レベル4は、危険な場所にいる人が全員避難する段階です。

避難に時間がかかる人ほど、早めに行動する必要があります。

Q. レベル5が出たら避難すればいい?

いいえ。

レベル5は、災害が発生または切迫している段階です。

すでに立退き避難が危険になっている可能性があります。

レベル5を待たないことが大切です。

高齢者の避難で家族が確認しておきたいチェックリスト

最後に、家族で確認してみてください。

避難先

□ 自宅のハザードマップを確認した

□ 避難場所を決めた

□ 避難経路を確認した

□ 実際に避難経路を歩いた

高齢者への支援

□ 誰が迎えに行くか決めた

□ 歩行速度を確認した

□ 杖・車椅子などを準備した

□ 必要な薬を準備した

情報

□ 防災情報を受け取れるようにした

□ 警戒レベル3の意味を家族が知っている

□ レベル4では危険な場所にいる人が全員避難することを知っている

□ レベル5を待たないことを共有している

まとめ|「まだ大丈夫」ではなく「安全なうちに避難する」

大雨や線状降水帯による水害では、状況が短時間で大きく変わることがあります。

私自身、消防士として河川付近の高齢者を救助していた際、上流のダム放流を知らせる無線を受け、急いで高台へ避難した経験があります。

その数十分後、河川は氾濫しました。

私たちが活動していた場所は水に覆われ、流木などの瓦礫が散乱しました。

この経験から、私は改めて、

「今は大丈夫だから」という判断だけで災害を考えてはいけない

と感じました。

災害は、自分が見ている場所だけで起きているわけではありません。

上流での降雨や河川の水位、ダムの放流など、見えない場所の変化によって状況が急激に変わることがあります。

だからこそ、

危険になってから避難するのではなく、安全に移動できるうちに避難する。

これが大切です。

特に高齢者や避難に時間がかかる方は、

警戒レベル3「高齢者等避難」

を一つの重要な目安にしてください。

そして、普段から、

  • 自宅の災害リスクを確認する
  • 避難場所を決める
  • 避難経路を実際に歩く
  • 誰が避難を支援するのか決める
  • 家族や地域で情報を共有する

ことをおすすめします。

私が消防署で地域の防災訓練を指導して感じたのは、避難場所を知っているだけでは十分ではないということです。

「どの道を通るのか」

「誰が助けるのか」

「どのタイミングで避難するのか」

ここまで具体的に決めておくことが、本当の意味での防災につながります。

「まだ大丈夫」ではなく、「今なら安全に逃げられる」

そう考えて早めに行動する。

その判断が、自分自身と大切な家族の命を守ることにつながります。

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